~  “黄泉比良坂”  葦原中国(人間の住む世界)と黄泉の国(死者の世界)を繋ぐ黄泉路  ~ 
 
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人間の視野って、両目で約200度くらいらしいです。
つまり後方の160度くらいは、死角になっているそうで。
今、このブログを見て頂いているアナタ。
後ろに誰かの気配を感じませんか?
でも、ダメですよ。振り返っちゃ。
見ない方がいいモノだって、世の中にはあるんですから・・・。


私は東京でサラリーマンをしているFといいます。
私の会社はビルの12階にあり、最新のセキュリティシステムとやらで管理されているそうです。
夜12時を超えると、エレベーターや防火シャッターが閉まり外部から一切侵入出来ないそうで。
情報を取り扱う我が社にとっては、うってつけのシステムらしいんですが。

ある日のこと。
仕事に追われてふと時計を見ると、時計の針は午前12時30分に。
『まずいぞ。』
遅くなる場合には管理人に連絡しておかないといけなかったのですが、その日はうっかりしていて。
ちゃっかり、ビル内のシャッターは閉まってしまっていました。
『仕方無い。非常階段から出るか。』
東京の雑居ビルの一角の非常階段は、ビルの間に無理やり作られような形になっており、人一人
が通れるのがやっとの狭さでした。
その狭い階段を、一緒に残業していた私、事務のA子さん、M田さん、K部長の順に降ることになりました。

寒さと疲れのせいで、私たちは無言で階段を降りて行きました。

‘カンカン’

‘カンカン’

静かな夜の闇の中で、私たちの足音だけが響いている・・・。
すると、急に。
『あはははは。』
K部長の笑い声が。
何がそんなに楽しいのか、大声で本当に楽しそうに。
『あはは。M田さん。ちょっと。』
『何ですか?』
M田さんがそう答えたかと思うと。

‘ゴキッ’

何かが折れるような音がして、急に静寂が戻りました。
‘どうしたんだろう。’
そう思いながらも、黙って階段を降り続けると。

『あはははは』
『うふふふふ』

今度は、M田さんまで笑っている。
それも、本当に楽しそうに。
『ねぇA子ちゃん。あははは。』
すぐ後ろのA子ちゃんにしきりに話しかけている声が。
『なにがそんなにおもしろいんですか?』
背中にA子ちゃんが振り向いた気配を感じた瞬間。

‘ゴキィ’

また、何かの折れる音が・・・。
そして・・・。

『あはははは』
『うふふふふ』
『アハハハハハ』

『なぁ、F。こっちを見てみろよ。あはは。』
『F君、こっちを見てよ。うふふ。』
『Fさん、こっちこっち。アハハ。』


今度は私を振り向かせようとしている・・・。

その時、気付きました。
階段を下りる足音。
自分の音しか響いていない事に・・・。

『なぁ、F。こっち向けよ。』
『F君、こっち見なさいよ。』
『Fさん、アハハ。』

声を無視して階段を駆け下りました。
そして、やっと1階に着いたその瞬間。


『コッチヲミロ!』

老婆のようなしわがれた声が背中から響いてきました。
私は無我夢中で階段から走り去り、十分に距離を置いてから階段を振り返りました。

・・・そこには、誰もいませんでした。
老婆も、A子ちゃんも、M田さんも、K部長も、誰も。


あれから、三人は行方不明のままです・・・。



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